たたりは絶対にございません。常光円満寺にはそういうご相談が今でも多いのですが、仏教の経典にはそのようなことは一切かかれてありません。それに赤子の心は純粋無垢です。限りなく美しい心の持ち主である赤子の精霊が、どうして恨みや妬みの気持ちがもてるのでしょう。恨みの思い・気持ちは、この世に生きているものだけが感じる煩悩です。
水子のたたりは、すべて迷信ですので、一切気になさらなくて大丈夫です。
ご自身が水子をお持ちでなくても、ご先祖さまの中には必ず水子はいらっしゃるものです。ましてや水子をお持ちの方は、多かれ少なかれ誰もが罪の意識はあるものです。その心の弱みにつけ込んで言葉巧みに供養をさせようとする方もいますが、それはお供養とは言わず、除霊と言われるものです。除霊とは、悪霊を追い払う儀式のことで、お供養とはまったく異なります。
赤子の気持ちになると、親からそのように思われて、除霊などさせられたら、どれほど哀しまれることでしょう。
純粋に考えたらわかることですが、水子はとても穏やかな精霊です。水子精霊が誰かを恨んだり憎んだりすることは決してございません。あなたの大切なお子さまです。とても親想いのお子さまです。周りの意見に左右されないお子さまを大切に思う強い信念をもちましょう。
たとえそうだとしても、お子さまとの因果関係は一切ございません。偶然という「いたずら」でしょう。それを赤ちゃんのせいにするのはよくありません。
逆にお子さまに守って下さるようにお願いすると良いでしょう。赤子の精霊といえども立派なご先祖さまなのです。私たちが辛いとき、苦しんでいるときほど温かく見守って下さる優しい精霊です。
ちょっとした時、ふと守って下さっていることを感じることがあるでしょう。そのときにそっと心の中で「ありがとうね」とお礼をしてあげましょう。
占いの方や自称霊能者の方は、よく「水子のたたり」のお話を持ちだされますが、これは当たる確立が非常に高いからでございます。
戦前は貧困が激しく、生活難等の理由で「間引き」が盛んに行われていたと言われております。ある統計によれば、「これまでに中絶を経験したことがありますか」という問いに対し、20代と30代では約20%、40代では30%、50代と60代では約40%の方々が、中絶を1回以上経験しているそうでございます。
つまり、たたりの話を持ちだすと、高確立で当たることがおわかりいただけるでしょう。さらに、両親や、そのまた両親などというようにさかのぼれば、ほぼ間違いなく中絶経験者を見つける事ができるのでございます。
占いの方や自称霊能者の方などへ相談なさる方のほとんどは、不幸を背負ってしまわれた方や不安な要因がある方でございます。そこに、「水子のたたり」を持ちだし、ご自身に中絶の経験ない場合は、血縁者で中絶経験者を探させるのです。そして、中絶経験者が見つかれば、この不幸の原因は「水子のたたり」だと思い込んでくれるのでございます。
また、今でこそ少なくなりましたが、以前は新聞の広告などで水子のたたりについていたずらに恐怖心をあおっているものが多くございました。「家庭内の不幸は水子が原因であり、水子供養をすればうまくいく」などという安易な思想が全国的に広まってしまったのでございます。これが、拍車をかけて「水子にはたたりがある」と思い込んでしまう原因でもございましょう。
たしかに、水子さまのお供養をしてあげることは尊いことでございます。だからといって「たたり」を理由にというお供養は、お子さまにとってはあまりにも可哀想でなりません。また、これは私どもが長年してきた水子供養とはまったく異なるものでございます。
本来の水子供養は、水子を美しい天国へと導いてくださるお地蔵さまや私たちを温かく見守ってくださる水子さまに感謝の気持ちをお届けして、お功徳(くどく)を授かるものでございます。
「水子のたたり」は、近年人間によって作られた偽りの話だということを、しっかりと認識してあげて、水子は清らかな存在として、いつまでも大切にしていただきたく存じます。