お写経の起源
お写経というのは、お釈迦さまのお説きになった経典(お経)を書き写す「行」です。お釈迦さまは私達をお救いくださる為に、8万4千の法門と呼ばれる莫大な経典をお説きになりました。これが『一切経』です。
写経の歴史は古く、その行われた範囲もアジア全土にまたがる広大な地域です。そして日本でも1300年の昔からお写経が行われてきました。
その昔、お釈迦さまの教えに従い、寺院を建立すると発願したものは、必ず心を清め、仏さまのご加護を念じ、経文を書き写し、願文を添えて、御本尊さまとともにおまつりしたことが「お写経」のはじまりなのです。お写経はお釈迦さまに帰依することでもあるのです。
洗心の写経
私達は、この世に生を受けますと、年をとり、病気にかかり、そして死を迎える、という不安感の中で生活し、常に悩み、苦しみ続けています。こうした人間の精神的苦悩から救われたいと願う心はいつの時代でも、人間が追い求めている課題でしょう。その道しるべとしてお説きになったのが、お経です。
お釈迦さまは、「人はみな生まれながらにして仏性あり」と説かれました。すべての人は、仏さまの「機根」を持ち、仏さまと同じような「ものを見る心」を持っているのですが、「球磨かざれれば光なし」のことわざの通り、心の訓練をしないと、真実の姿を見ることはできません。まして、現代のような富める社会になりますと、目移りすることが多すぎて、自分にとって、何が大切であり、何が幸福であるのかを見極めることが大変難しくなっています。
ものを見る心の窓を洗い清めて、仏性を磨くための写経が「洗心の写経」です。
お写経の功徳
人間を幸福に導くお釈迦さまの願いがお経です。従って、読誦すれば無明を除くと説かれているように、お経を唱え、写経を致しますと無明広大な功徳をいただくことができます。
最近一般には、『般若心経』のお写経が盛んです。『般若心経』は文字の数はわずかに260文字余りですが『大般若経』600巻を要約した、お釈迦さまの教えの心髄といわれているありがたいお経です。
皆様方の中には、お経というと頭からむつかしいものと思い込み、お写経というと字が下手ですからと、しりごみなさる方が多いように見受けられます。確かにお経は難解ですが、毎日繰り返しお唱え致してますと、赤児の鳴き声で赤児が何を求めているのかがわかる母親のように仏さまの申されることが、なんとなくわかるようになるのです。このことを「音聲(おんじょう)は即ち実相(じっそう)を表す」と申します。
お写経には宗派とか字の上手・下手などは全く関係ありません。お写経は、同じく、仏さまとの対話ですので、仏さまの教えを、心をこめて「書かせていただいているんだという心」でお書きいただければそれで良いのです。お写経を書いていますと、自然に心が統一され、今までわからなかったこともわかり見えなかったことも見えてまいります。
それがお写経の功徳なのです。
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